SNS型投資詐欺で「あと少し払えば出金できる」と言われたら?行政書士やさしく解説

SNS型投資詐欺で「あと少し払えば出金できる」と言われたら?行政書士が生活を守るための考え方をやさしく解説

「あと80万円支払えば利益も元本も引き出せます。」

もし、このような連絡が来たら、あなたはどう判断するでしょうか。

近年、SNSをきっかけとした投資詐欺の被害が全国で急増しています。最初は少額から始まり、実際に少しだけ出金できることで信用させ、その後は「税金」「保証金」「本人確認費用」など、さまざまな名目で追加送金を求められるケースが後を絶ちません。

実際の相談では、「騙されたかどうか」よりも、「これから生活をどう立て直すか」の方が重要になる場面が多くあります。

今回は、SNS型投資詐欺を題材に、行政書士の立場から、生活を守るために最初に考えるべきポイントをわかりやすく解説します。

相談事例

今回のケースは、62歳の女性です。

夫を亡くし、一人暮らしをしながら、高齢の母親の介護も担っています。

SNSで知り合った人物から「老後資金を増やせる投資がある」と勧められ、半年間で430万円を送金しました。

投資サイトには1,200万円以上の利益が表示されていますが、出金するためには「国外送金保証金」としてさらに80万円が必要だと言われています。

預金はほぼなくなり、消費者金融からも借入れをしています。それでも本人は、「あと80万円払えば全部戻る」と信じ、自宅を担保にお金を借りようと考えていました。

さらに、「家族には絶対に知られたくない」と話しています。

本当の問題は「80万円」ではありません

この相談で、多くの人は「詐欺だから払ってはいけません」という結論を思い浮かべるでしょう。

もちろん、その判断は間違っていません。

しかし、実際の相談では、それだけでは十分とは言えません。

私は、この問題の本質は「生活そのものが崩れ始めていること」だと考えます。

今回のケースでは、すでに次のような問題が同時に起きています。

  • 預金がほぼなくなっている
  • 借金が増えている
  • 住宅ローンが残っている
  • 介護費用が必要になる
  • 家族に相談できず孤立している
  • 精神的にも追い詰められている

つまり、「80万円を払うかどうか」が問題なのではなく、「これ以上生活を壊さないこと」が最優先なのです。

なぜ被害者は追加で送金してしまうのでしょうか

「なぜ途中で気付かなかったのか」と疑問に思う人もいるかもしれません。

しかし、実際には誰にでも起こり得る心理があります。

これまでのお金を無駄にしたくない

何百万円も支払ったあとでは、「ここでやめたら全部失う」と考えてしまいます。

そのため、「あと少しだけ払えば取り戻せる」という言葉を信じたくなるのです。

相手との信頼関係ができている

SNS型投資詐欺では、いきなり投資の話になることは少なくありません。

毎日のようにメッセージを送り合い、家族のことや将来の不安を聞き出し、時間をかけて信頼関係を築いていきます。

そのため、被害者は「お金を騙された」というより、「信頼していた相手に裏切られた」という感覚になりやすいのです。

恥ずかしくて相談できない

「家族に知られたら怒られる」「情けないと思われる」という気持ちから、一人で抱え込む方も少なくありません。

しかし、この孤立こそが、被害をさらに大きくする原因になります。

最優先すべきことは生活を守ることです

私は、このようなケースでは次の順番で考えることが重要だと考えます。

①追加送金を止める

「あと少しだけ」という言葉に応じてしまうと、さらに被害が拡大する可能性があります。

まずは追加送金や、新たな借入れ、自宅を担保にした資金調達を止めることが重要です。

②生活資金を確認する

今ある預金で、何か月生活できるのかを整理します。

住宅ローンや家賃、公共料金、介護費用など、優先順位を付けながら確認していきます。

③証拠を残す

振込明細、SNSのやり取り、投資サイトの画面、送金先口座などは、できる限り保存しておきます。

削除してしまうと、後から経緯を整理することが難しくなる場合があります。

④信頼できる人と情報を共有する

家族にすべてを一度に話す必要はありません。

ただし、一人で抱え込むことは避けたいところです。

本人の気持ちに配慮しながら、誰に、どこまで伝えるのかを慎重に考えることが大切です。

感情だけで動くと二次被害につながることもあります

詐欺だと気付いた直後は、怒りや悔しさから相手を問い詰めたくなるかもしれません。

一方で、「すぐに取り返したい」という焦りから、回収をうたう業者に依頼してしまい、新たな被害につながるケースもあります。

また、自宅を売却したり、リースバックを利用したりしてまで資金を作ろうとすると、住まいまで失う危険があります。

重要なのは、感情に任せて行動することではなく、「これ以上失わないために何を優先するか」を冷静に整理することです。

行政書士として私が最初に考えること

私は、このような相談では、「本当に取り返せるか」という点よりも、まず相談者の生活が維持できるかどうかを確認します。

生活費は足りるのか。

住宅ローンは支払えるのか。

介護は続けられるのか。

精神的に限界まで追い詰められていないか。

この順番を間違えると、たとえ法的な手続きが進んだとしても、生活そのものが立ち行かなくなる可能性があります。

法律上の正しさだけではなく、これから先の暮らしを守るという視点が欠かせません。

関連する法令・制度

刑法第246条(詐欺罪)

人を欺いて財産を交付させる行為を処罰する規定です。SNS型投資詐欺でも該当する可能性があります。

消費者庁・警察庁による注意喚起

「税金」「保証金」「手数料」などの名目で追加送金を求める手口については、繰り返し注意喚起が行われています。最新の情報は公的機関の案内も確認するとよいでしょう。

まとめ

SNS型投資詐欺では、「あと少し払えば取り戻せる」という言葉によって、さらに被害が拡大するケースが少なくありません。

しかし、本当に守るべきものは、投資サイトに表示された数字ではありません。

これからの生活、住まい、家族との関係、そして将来への安心です。

私は、このような問題では、勝つことよりも、まず被害を広げないことを優先すべきだと考えます。

そのためには、追加送金を止め、生活状況を整理し、証拠を保全し、信頼できる人と少しずつ情報を共有していくことが重要です。

焦る気持ちは当然です。しかし、順番を間違えなければ、生活を立て直すための道筋は見えてきます。

重要なのは、「誰が正しいか」ではなく、「これからの生活を守れるか」という視点を持つことです。


※免責事項
この記事は一般的な情報提供を目的として作成したものです。個別の事案は、事実関係や証拠の内容によって判断が異なります。制度や法令は改正されることがあるため、最新の公的機関の情報をご確認ください。